動物の慢性感染症・腫瘍と免疫チェックポイント分子

 獣医療領域において慢性感染症や腫瘍は臨床の現場で大きな問題となっており、効果的な予防法・治療法がないものも未だ数多く存在します。これらの疾患では、免疫チェックポイント分子と呼ばれる、免疫反応を負に制御する分子群の発現によって宿主免疫細胞の疲弊化が起こり、病原体の排除が困難となっている場合があります。本研究室では主にウシ、ニワトリ、イヌの難治性慢性疾患に対する新規予防法・治療法の開発を目指し、免疫チェックポイント分子について研究を行っています。

 代表的な免疫チェックポイント分子であるProgrammed cell death 1 (PD-1) は、リンパ球上に発現する共刺激受容体であり、リガンドのPD-ligand 1 (PD-L1) やPD-L2と結合すると抑制性のシグナルを細胞内へ送ります。種々の慢性感染症や腫瘍では、抗原特異的T 細胞上にPD-1が高発現する一方、感染細胞や腫瘍細胞上にPD-L1が発現誘導され、本来排除されるはずの細胞をT細胞が攻撃できない状態に陥っています。一方で、この抑制は可逆的であり、抗PD-1抗体などを用いて分子間の結合を阻害するとT細胞応答が再び活性化し、疾病の治療に応用できる可能性があります。

 

 

 当研究室では、ウシの難治性疾患として地方病性牛白血病、ヨーネ病、アナプラズマ症、マイコプラズマ感染症などを、またニワトリではマレック病、イヌでは種々の悪性腫瘍を対象に免疫チェックポイント分子の発現解析を行い、病態形成に及ぼす影響について検討を行っています。また分子間の結合を阻害する治療用ブロック抗体の開発を行い、各疾病に対する治療効果の検討を実施しています。特に牛白血病に対しては、治療用抗PD-1抗体あるいは抗PD-L1抗体の投与により感染牛体内の病原ウイルス量を低減することに成功し、これらの抗体は新たなバイオ医薬品として疾病制御への応用が期待されます。

 

   

 

  


プレスリリース

2018年4月2日

ヨーネ病の病態発生メカニズムを解明 ~家畜法定伝染病ヨーネ病に対する制御法への応用に期待~

2017年8月25日

イヌのがん治療に有効な免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-L1 抗体)の開発にはじめて成功~北海道大学動物医療センターにおける臨床研究成果~

2017年6月7日

牛難治性疾病の制御に応用できる免疫チェックポイント阻害薬 (抗 PD-1 抗体)を,抗 PD-L1 抗体薬に続き開発

2017年4月27日

牛難治性疾病の制御に応用できる免疫チェックポイント阻害薬 (抗 PD-L1 抗体)の開発にはじめて成功