プレスリリース・論文掲載情報

2025/7/28

 

 長崎大学 高度感染症研究センターの好井健太朗教授、北海道大学 大学院獣医学研究院の今内覚教授、小林進太郎准教授らの研究グループは、血液脳関門を透過するペプチドを融合した抗体(下記参考図内では「BBB透過型抗体」と表記)を開発し、国内外で脳炎患者が発生しているダニ媒介性脳炎ウイルスに対して、感染後の脳内からウイルスを排除できることを示しました。本研究成果は、ダニ媒介性脳炎を始めとするウイルス性神経疾患への治療法開発への応用が期待されます。

 本研究は2025年7月7日に米国微生物学会誌「mSphere」に掲載され、本日、北大広報を通じてプレスリリースがありました。

 

【プレスリリース】

ダニ媒介性脳炎ウイルスに対し、感染後の脳内からウイルスを排除できることを発見~血液脳関門を通過する抗体で高病原性脳炎ウイルスの治療の可能性~

 


  

【研究成果のポイント】
・ダニ媒介性脳炎は現在、効果的な治療法が存在しない重篤なウイルス性中枢神経感染症。
・血液脳関門を透過するペプチドを融合させた抗体により、ウイルスが増殖する脳内に抗体を届け、排除することが可能に。
・本研究は、ダニ媒介性脳炎ウイルスが脳に侵入した後の治療効果を示した初の報告であり、新たな中枢神経感染症治療への応用が期待される。

 プレスリリース全文(PDF)

 

【研究成果に関する原著論文】

  本研究成果は、2025年7月7日公開のmSphere誌にオンライン掲載されました。

 

  Fukuta M, Fukano S, Maekawa N, Kobayashi S, Okamoto S, Hirano M, Nio-Kobayashi J, Kariwa H, Kawakami S, Konnai S, Yoshii K.

 

  Development of blood-brain barrier-penetrating antibodies for neutralizing tick-borne encephalitis virus in the brain

  (脳内のダニ媒介性脳炎ウイルスを中和する血液脳関門透過型抗体の開発)

 

  mSphere. 2025 Jul 7:e0018425.

  doi: 10.1128/msphere.00184-25. Online ahead of print. 

  https://journals.asm.org/doi/10.1128/msphere.00184-25(オープンアクセス)

 

 

【プレスリリース図表】

【参考図】開発した抗体による血液脳関門透過と脳内ウイルス中和のイメージ図

 

 

 

 

 

 

 


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