プレスリリース・論文掲載情報
2026/5/1
本研究室は長年、ブラジルのリオグランデ・ド・スール連邦大学及びリオデジャネイロ連邦大学とマダニに対する新規制御法の開発およびマダニ媒介性病原体の伝播機序解明に関する共同研究を行っております。
https://lab-inf.vetmed.hokudai.ac.jp/news/240402/
この度、本教室大学院生中村隼人さんがブラジルで行った共同研究成果についての論文が掲載されました。
著者:Hayato Nakamura, Tomohiro Okagawa, Naoya Maekawa, Luís Fernando Parizi, Mari Ikehata, Wisa Tiyamanee, Shwe Yee Win, Hiroto Takeuchi, Keisuke Maezono, Passawat Thammahakin, Shintaro Kobayashi, Mizuki Fukuta, Minato Hirano, Kentaro Yoshii, Shiro Murata, Kazuhiko Ohashi, Carlos Logullo, Itabajara da Silva Vaz J, Satoru Konnai
論文タイトル:Tick saliva reprograms macrophages into immunosuppressive hubs that regulate T-cell immunity in Rhipicephalus microplus infestation
掲載誌:Communications Biology
https://www.nature.com/articles/s42003-026-09981-5?utm_source=rct_congratemailt&utm_medium=email&utm_campaign=oa_20260430&utm_content=10.1038/s42003-026-09981-5 (open access)
また、この共同研究の成果について、2026年5月1日に北大広報を通じてプレスリリースがありました。
【プレスリリース】
【プレスリリースの概要】
オウシマダニは、主にウシに寄生する一宿主性のマダニであり、亜熱帯及び熱帯地域を中心として世界的に分布しています。吸血による被害に加え、様々な病原体を伝播することから、畜産生産に深刻な被害を与える重要な外部寄生虫として知られています。マダニは吸血の際に唾液中の様々な分子を宿主に注入し、宿主の免疫応答を抑えることで長時間の吸血を可能にしています。このようなマダニ唾液による免疫抑制は以前から知られていましたが、どの免疫細胞がその抑制作用の中心的な役割を担っているのかは十分に解明されていませんでした。そこで本研究では、マダニ唾液が宿主の免疫系に及ぼす影響を詳細に解析しました。その結果、マダニ唾液はマクロファージの性質を大きく変化させ、炎症性サイトカインの産生や抗原提示機能を低下させる一方で、免疫抑制性サイトカインの発現を誘導することが明らかになりました。さらに、このような免疫抑制型マクロファージは周囲の免疫環境を調節し、T細胞による炎症性サイトカインの産生を抑制するとともに、制御性T細胞における免疫抑制性サイトカインの発現を増加させることが示されました。加えて、マクロファージ系細胞を除去するとこれらの免疫抑制効果が消失したことから、マダニ唾液による免疫抑制はマクロファージを中心とした細胞機構によって引き起こされることが明らかとなりました。本研究成果は、マダニが宿主免疫を回避する新たな仕組みを明らかにするものであり、マダニ媒介感染症の制御や新たな免疫制御戦略の開発につながることが期待されます。
【参考図:オウシマダニ唾液によるマクロファージを介した免疫抑制機構】

過去のプレスリリース・ニュース
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Predicting the onset of bovine lymphoma ― Development of cancer screening technology
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2019年12月25日
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