ダニ/ワクモ制御法の開発

 マダニとワクモは、いずれも吸血を行う外部寄生虫であり、家畜衛生および公衆衛生上、大きな問題となっています。私たちは、これらマダニとワクモについて新規制御法の開発を目指しています。

 

 

 

マダニによる宿主免疫制御機構の解明

 マダニは宿主に数日から数週間にわたって付着しながら吸血を続けます。この長期間の吸血を可能にしているのが、唾液に含まれるさまざまな分子により生じる免疫抑制作用です。このような免疫抑制は、ウイルス、細菌、原虫などのダニ媒介病原体の感染や伝播を助ける重要な要因と考えられています。しかし、マダニがどのように宿主の免疫応答を抑えているのか、その詳細な仕組みは十分に解明されていません。

 私たちは、オウシマダニ(Rhipicephalus microplus)の唾液が宿主の免疫細胞に与える影響を解析しています。特に、T細胞とその働きを調節する樹状細胞やマクロファージに着目し、マダニ唾液による免疫抑制のメカニズムを調べています。これまでの研究から、マダニ唾液はT細胞の炎症反応を抑えるだけでなく、樹状細胞やマクロファージを免疫抑制的な状態へと変化させることが分かってきました。また、実際のダニ咬傷部位で、免疫抑制性サイトカインを産生するマクロファージやT細胞が集積し、局所的な免疫抑制環境が形成されていることを明らかにしています。

 マダニ唾液による免疫制御機構の解明を通じて、寄生虫による免疫制御の新たなメカニズムの理解や、将来的な感染症対策への応用にもつながることが期待されます。

ブラジルでのマダニ唾液の採材の様子

 

マダニ唾液による免疫抑制機構

 

 

シュルツェマダニ(雌成虫)

 

ワクモの問題点とワクチンによる防除

 ワクモ (Dermanyssus gallinae) は鶏に寄生して吸血を行うダニの一種で、鶏に貧血や産卵率の低下などをひき起こし、養鶏産業に甚大な被害を招いています。またワクモは、様々な病原体を媒介する可能性も報告されており、家畜衛生および公衆衛生上、対応が必要とされています。現在、ワクモの防除は鶏舎の洗浄や薬剤の散布により行われていますが、ワクモが鶏舎内の隙間に潜んでいると完全な駆除は困難です。さらに、薬剤耐性ワクモの出現も報告されており、殺ダニ剤に頼らない新しいワクモ防除方法の確立が望まれています。私たちは、免疫応答による防除に着目し、抗ワクモワクチンの開発を行っています。これまでに様々なワクチン抗原候補タンパク質を同定しており、これらの機能解析、鶏を用いた免疫試験、さらに抗ワクモ効果の評価を行い、ワクチン抗原への応用を目指しています。

 また、並行して抗ワクモワクチンの投与方法についても検討しています。養鶏農場で飼育されている鶏は膨大な数に上るため、負担の少ない形で大量の鶏を免疫することが可能となるような投与方法が必要です。そこで私たちは、七面鳥ヘルペスウイルス(HVT)をウイルスベクターとして応用したワクチンを開発することを検討しています。HVTはマレック病のワクチンとして既に使用されており、卵内あるいは初生ヒナ投与が可能であり、膨大な数の鶏に簡便に接種することができます。HVTを使用することにより、効率よく養鶏場にに抗ワクモワクチンを導入することが可能となることが期待されます。

 

 


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プレスリリース・ニュース

2026年5月1日

マダニの唾液はマクロファージ依存性に宿主免疫を抑制する~制御性T細胞の誘導を介したマダニの免疫回避機構の解明に期待~

2021年1月28日

Deeper insight into how tick spit suppresses cattle immunity

2021年1月14日

マダニ唾液が免疫チェックポイント因子の発現を誘導~マダニ媒介性病原体の伝播機序の解明に期待~